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知的財産権に関する7つの誤解|リスク回避のために知っておきたいこと

知的財産権は、現代のビジネスにおいて欠かせない要素の一つです。しかし、その概念や適用範囲については、多くの誤解が存在します。


この記事では、特に誤解されがちなポイントを7つ紹介します。知的財産権を理解し、リスクを回避するための第一歩としてお役立てください。



誤解その1.「知的財産権の内容は1つの法律で定められている」

「知的財産権」とは、人間の知的創作活動の成果である創作物やアイデアのうち、財産的価値のあるものに法的保護が付与された権利の総称です。


知的財産権には、「特許権」「商標権」「意匠権」「著作権」などさまざまな種類があり、それぞれ個別の法律によってその保護対象や権利の内容が定められています。


たとえば、特許権は「発明」を、商標権はロゴやブランド名、商品名といった「商標」を、意匠権は「意匠(デザイン)」を保護します。


それぞれの権利が発生するための要件や手続き、保護範囲は様々です。よって、企業の知財戦略上、異なる種類の知的財産権を正しく理解して適切に管理することが重要になります。



誤解その2.「すべてのアイデアやデザインが知的財産権で保護される」

知的財産権は、具体的なアイデアやデザインに対して付与されるものであり、抽象的なアイデアやコンセプトは保護されません。また、個別の法律に定められた要件を満たす場合にのみ、保護が与えられます。


例えば、特許を取得するには「新規性」「進歩性」「工業的応用性」などの要件を満たす必要があります。同様に、意匠権で保護される「意匠」とは、「物品の形態であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」であり、かつ「工業上利用することができる」意匠に限られます。


このように、主観的に「発明」だと認識している技術や、抽象的な発想に過ぎないビジネスアイデアを生み出しても、必ずしも特許権や意匠権を取得することはできません。


また、「美しさ」の追求ではなく「使いやすさ(機能性)」を追求したデザイン、あるいは純粋美術の分野に属する彫刻デザインなどは、意匠権の対象外になることがあります。



誤解その3.「知的財産権は一度取得すれば永遠に有効」

知的財産権は、永続的な権利ではありません。


例えば、特許権の存続期間は出願日から原則として20年、商標権の存続期間は登録日から10年、意匠権(2020年4月1日以降に出願のあった意匠権)の存続期間は出願日から最長25年となっています。


また、出願登録なしに権利が発生する著作権も、一般的に著作者の死後70年を経過すると消滅します。


知的財産権の種類ごとに存続期間や延長のための手続きが異なりますので、適時適切な更新手続きと管理が求められます。



誤解その4.「知的財産権は自動的に世界中で保護される」

知的財産権は自動的に保護されるという誤解がありますが、特許権、実用新案権、商標権、意匠権といった権利は、特許庁に出願して登録されなければ発生しません(ただし、著作権は、著作物を創作した時点で自動的に発生する)。


また、知的財産権は国ごとに取得されるものであり、一国で保護を受けているからといって、他の国でただちに保護されるわけではありません。知的財産制度は国によって異なりますから、国際的な保護を希望する場合は、各国での登録や国際的な条約に基づく手続きが必要です。



誤解その5.「ひとつの製品や創作物が複数の知的財産権で保護されることはない」

ひとつの製品や創作物はひとつの知的財産権で保護されるという誤解がありますが、実際には、複数の知的財産権で保護されることが珍しくありません。例えば、ある製品の動力部分に搭載されている技術は特許権で、製品の外観デザインは意匠権、製品名は商標権で保護されるといったことが行われています。


複数の知的財産権を組み合わせることで、その製品を展開する企業は、製品の競争力やブランド力を高めることができるのです。



誤解その6.「権利者であれば知的財産権を自由に行使できる」

知的財産権の権利者であっても、個別法で定められた範囲外の権利行使はできません。例えば、商標権は「指定商品又は指定役務」の範囲でのみ行使できますし、著作権には一定の「権利制限規定」が設けられています。


また、独占禁止法や契約上の制約により権利の行使が制限されることもあります。他者の知的財産権との矛盾や衝突が起きた場合には、法的な紛争に至る懸念もあります。


知的財産権を適切に行使するには、法律や契約関係を理解したうえで、権利取得に向けた事前調査の段階から慎重に行動することが重要です。



誤解その7.「知的財産権を侵害しても、個人であれば大きな問題にはならない」

知的財産権侵害は、個人であっても重大な法的問題を引き起こす可能性があります。知的財産権を侵害したことが認められれば、権利者に対する損害賠償や侵害行為の差止め(製品の製造・販売の停止など)、さらには刑事罰が科されることもあります。


インターネットを通じた情報やコンテンツの共有が容易な現代では、特に著作権をはじめとする知的財産権の侵害リスクが増加しています。他者の知的財産権を実施する可能性のあるときは、知的財産権を尊重する姿勢を意識しながら、権利者の許可を得て実施しましょう。



まとめ

今回は、知的財産権に関するよくある誤解を7つ紹介しました。以上のポイントを理解し、知的財産権に関する正しい知識を持つことで、ビジネスを安全に展開し、無用なリスクを回避できます。知的財産に関する疑問や不安がある方は、専門家に相談することをおすすめします。


井上国際特許商標事務所には、知的財産全般の知見が豊富な弁理士が所属しています。ぜひご相談ください。


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