中小企業、個人事業主等が2019年4月1日以降に特許出願の審査請求を行う場合、特許庁に支払う出願審査請求手数料と特許料が減額になります。特許法109条の2、特許法195条の2の2の改正法が2019年4月1日に施行されたことに基づきます。
従来よりも減額のための手続負担が軽減されており、特許取得費用を節約できるため、該当する場合には積極的に利用すべき制度となっています。
減額の対象となる主な企業等と減額率は以下の通りです。複数該当する場合は最も軽減率の高いものを採用します。
1.設立後10年以上の中小企業(1/2に軽減)
2.事業開始後10年以上の個人事業主(1/2に軽減)
3.設立後10年未満の中小企業(1/3に軽減)
4.事業開始後10年未満の個人事業主(1/3に軽減)
5.小規模の中小企業(1/3に軽減)
6.小規模の個人事業主(1/3に軽減)
7.その他の減額の対象企業等
これらの各対象について、以下に詳しく解説します。
1.設立後10年以上の中小企業
1-1. 対象となる中小企業
以下の条件①~③を全て満たす必要があります。
条件①:
以下の(i)~(vii)のいずれかの企業に該当すること
(i) 製造業、建設業、運輸業その他の業種(下記(ii)~(vii)を除く)であって、常時使用する従業員数が300人以下、又は、資本金額又は出資総額が3億円以下の企業
(ii) 卸売業であって、常時使用する従業員数が100人以下、又は、資本金額又は出資総額が3億円以下の企業
(iii) サービス業(下記(vi),(vii)を除く)であって、常時使用する従業員数が100人以下、又は、資本金額又は出資総額が3億円以下の企業
(iv) 小売業であって、常時使用する従業員数が50人以下、又は、資本金額又は出資総額が5,000万円以下の企業
(v) ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く)であって、常時使用する従業員数が900人以下、又は、資本金額又は出資総額が3億円以下の企業
(vi) ソフトウエア業又は情報処理サービス業であって、常時使用する従業員数が300人以下、又は、資本金額又は出資総額が3億円以下の企業
(vii) 旅館業であって、常時使用する従業員数が200人以下、又は、資本金額又は出資総額が5,000万円以下の企業
条件②:
単独の大企業(上記条件①を満たさない法人)が株式総数又は出資総額の1/2以上の株式又は出資金を有していないこと
条件③:
複数の大企業が株式総数又は出資総額の2/3以上の株式又は出資金を有していないこと
1-2. 軽減率
1-2-1. 審査請求手数料
特許出願の審査を請求する際の手数料が1/2に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、通常178,000円の手数料が、軽減により、89,000円となります。
1-2-2. 特許料
特許が付与された後、毎年分を納付する特許料が1/2に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、第1年から第10年分の特許料は、通常247,800円ですが、軽減により、123,900円となります。
1-2-3. まとめ
以上のように、軽減措置の適用を受けることで、請求項が10個ある特許の場合、合計で212,900円を削減することができます。請求項が10個ある特許を取得する費用と10年間維持する費用としては、通常、100万円が目安となりますので、軽減措置の適用により費用の約20%を削減できることとなります。
2.事業開始後10年以上の個人事業主
2-1. 対象となる個人事業主
以下の(i)~(vii)のいずれかに該当する個人事業主である必要があります。なお、事業を行っていない個人は軽減の対象とはなりません。
(i) 製造業、建設業、運輸業その他の業種(下記(ii)~(vii)を除く)であって、常時使用する従業員数が300人以下の個人事業主
(ii) 卸売業であって、常時使用する従業員数が100人以下の個人事業主
(iii) サービス業(下記(vi),(vii)を除く)であって、常時使用する従業員数が100人以下の個人事業主
(iv) 小売業であって、常時使用する従業員数が50人以下の個人事業主
(v) ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く)であって、常時使用する従業員数が900人以下の個人事業主
(vi) ソフトウエア業又は情報処理サービス業であって、常時使用する従業員数が300人以下の個人事業主
(vii) 旅館業であって、常時使用する従業員数が200人以下の個人事業主
2-2. 軽減率
2-2-1. 審査請求手数料
特許出願の審査を請求する際の手数料が1/2に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、通常178,000円の手数料が、軽減により、89,000円となります。
2-2-2. 特許料
特許が付与された後、毎年分を納付する特許料が1/2に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、第1年から第10年分の特許料は、通常247,800円ですが、軽減により、123,900円となります。
2-2-3. まとめ
以上のように、軽減措置の適用を受けることで、請求項が10個ある特許の場合、合計で212,900円を削減することができます。請求項が10個ある特許を取得する費用と10年間維持する費用としては、通常、100万円が目安となりますので、軽減措置の適用により費用の約20%を削減できることとなります。
3.設立後10年未満の中小企業
3-1. 対象となる中小企業
以下の条件①~③を全て満たす必要があります。
条件①: 設立後10年未満で資本金額又は出資総額が3億円以下の法人であること
条件②: 単独の大企業(資本金額又は出資総額が3億円以下の法人以外の法人)が株式総数又は出資総額の1/2以上の株式又は出資金を有していないこと
条件③: 複数の大企業(資本金額又は出資総額が3億円以下の法人以外の法人)が株式総数又は出資総額の2/3以上の株式又は出資金を有していないこと
3-2. 軽減率
3-2-1. 審査請求手数料
特許出願の審査を請求する際の手数料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、通常178,000円の手数料が、軽減により、59,330円となります(10円未満は切り捨て)。
3-2-2. 特許料
特許が付与された後、毎年分を納付する特許料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、第1年から第10年分の特許料が、通常247,800円ですが、軽減により、82,570円となります(各年分について10円未満を切り捨てて積算)。
3-2-3. まとめ
以上のように、軽減措置の適用を受けることで、請求項が10個ある特許の場合、合計で283,900円を削減することができます。請求項が10個ある特許を取得する費用と10年間維持する費用としては、通常、100万円が目安となりますので、軽減措置の適用により費用の30%近くを削減できることとなります。
4.事業開始後10年未満の個人事業主
4-1. 対象となる個人事業主
事業開始後10年未満である個人事業主が対象となります。
4-2. 軽減率
4-2-1. 審査請求手数料
特許出願の審査を請求する際の手数料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、通常178,000円の手数料が、軽減により、59,330円となります(10円未満は切り捨て)。
4-2-2. 特許料
特許が付与された後、毎年分を納付する特許料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、第1年から第10年分の特許料が、通常247,800円ですが、軽減により、82,570円となります(各年分について10円未満を切り捨てて積算)。
4-2-3. まとめ
以上のように、軽減措置の適用を受けることで、請求項が10個ある特許の場合、合計で283,900円を削減することができます。請求項が10個ある特許を取得する費用と10年間維持する費用としては、通常、100万円が目安となりますので、軽減措置の適用により費用の30%近くを削減できることとなります。
5.小規模の中小企業
5-1. 対象となる中小企業
以下の条件①~③を全て満たす中小企業が軽減の対象となります。
条件①: 常時使用する従業員の数が20人以下(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者にあっては、5人以下)である法人であること
条件②: 単独の大企業(中小企業以外の法人)が株式総数又は出資総額の1/2以上の株式又は出資金を有していないこと。
条件③: 複数の大企業(中小企業以外の法人)が株式総数又は出資総額の2/3以上の株式又は出資金を有していないこと。
5-2. 軽減率
5-2-1. 審査請求手数料
特許出願の審査を請求する際の手数料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、通常178,000円の手数料が、軽減により、59,330円となります(10円未満は切り捨て)。
5-2-2. 特許料
特許が付与された後、毎年分を納付する特許料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、第1年から第10年分の特許料が、通常247,800円ですが、軽減により、82,570円となります(各年分について10円未満を切り捨てて積算)。
5-2-3. まとめ
以上のように、軽減措置の適用を受けることで、請求項が10個ある特許の場合、合計で283,900円を削減することができます。請求項が10個ある特許を取得する費用と10年間維持する費用としては、通常、100万円が目安となりますので、軽減措置の適用により費用の30%近くを削減できることとなります。
6.小規模の個人事業主
6-1. 対象となる個人事業主
常時使用する従業員の数が20人以下(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者にあっては、5人以下)の個人事業主であること。
6-2. 軽減率
6-2-1. 審査請求手数料
特許出願の審査を請求する際の手数料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、通常178,000円の手数料が、軽減により、59,330円となります(10円未満は切り捨て)。
6-2-2. 特許料
特許が付与された後、毎年分を納付する特許料が1/3に軽減されます。
例えば、請求項が10個ある特許出願の場合、第1年から第10年分の特許料が、通常247,800円ですが、軽減により、82,570円となります(各年分について10円未満を切り捨てて積算)。
6-2-3. まとめ
以上のように、軽減措置の適用を受けることで、請求項が10個ある特許の場合、合計で283,900円を削減することができます。請求項が10個ある特許を取得する費用と10年間維持する費用としては、通常、100万円が目安となりますので、軽減措置の適用により費用の30%近くを削減できることとなります。
7.その他の減額の対象企業等
上記以外に減額の対象となる企業等は以下の通りです。
・中小企業(組合・NPO法人)
・研究開発型中小企業(法人・個人事業主)
・法人税非課税中小企業(法人)
・個人(市町村民税非課税者等)
・大学等の研究者、大学等
・独立行政法人
・公設試験研究機関
・地方独立行政法人
・承認TLO
・試験独法関連TLO
・福島復興再生特別措置法の認定重点推進計画に基づいて事業を行う中小企業(法人・個人事業主)